はやし ゆきお
林 行夫 HAYASHI Yukio
地域研究統合情報センター・教授
[2011年4月17日更新]
東南アジア民族誌学、文化人類学、宗教と社会の地域研究
大陸部東南アジアに拡がる上座仏教徒社会で、主に地方農村の人びとの生活世界と宗教実践に関心をもち、タイを中心にラオス、カンボジア、西南中国の云南にでかけています。そこで宗教とは、個人の行動を左右し共同体や社会関係を築くプログラムのようなものです。仏教は、前世紀以来各国が制度として統括し表象する一方で、人びとの暮らしに根ざした多様な実践を築いています。いわば環境と歴史の産物であるその実践の担い手と社会を、1980年初頭以来の一地域での観察および地域・国家間比較の両面から明らかにしようとしてきました。そして、人びとの生き方や宗教実践に影響を及ぼすグローバルな変化をミクロな生活世界にとらえ、ミクロな経験をマクロな地平で考えようとしています。
2006年度より「寺院の時空間マッピング」という研究を開始しました。一般男性が出家し住民が寺院を造営する仏教徒社会では、寺院は単なる宗教施設を超えて集落や地域そのものの形成と関わります。その立地の歴史と環境、出家者の移動歴を精査して地域情報学の成果とリンクさせようというものです。現在の調査対象はタイ=ラオス国境の一地域に限られていますが、近い将来タイ全体へ、さらには隣接諸国との共同研究へと拡げ、実践宗教からみた大陸部東南アジア社会の生成と変容を「虫瞰図」的に示す研究へと進展させることを構想しています。
龍谷大学大学院文学研究科博士課程修了。国立民族学博物館研究部助手、京都大学東南アジア研究センター助教授、同教授を経て2006年4月から現職。学術博士(京都大学)。
2011『静と動の仏教―新アジア仏教史4(スリランカ・東南アジア)』佼成出版社(奈良康明、下田正弘監修、編集協力/共著)。
2009『<境域>の実践宗教―大陸部東南アジア地域と宗教のトポロジー』京都大学学術出版会(編著)
2003 Practical Buddhism among the Thai-Lao: Religion in the Making of Region, Kyoto and Melbourne: Kyoto University Press and Trans Pacific Press.
2002 Inter-Ethnic Relations in the Making of Mainland Southeast Asia and Southwestern China, Bangkok: Amarin Printing and Publishing. (Coeditor: WICHIENKEEO, Aroonrut)
2000『ラオ人社会の宗教と文化変容―東北タイの地域・宗教社会誌』京都大学学術出版会。