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非文字資料と集合的記憶

新規プロジェクト

非文字資料と集合的記憶

代表 貴志 俊彦
研究目的: 文字資料とともに、図画像資料、映像資料、音声資料などの、いわゆる非文字資料は、個人、集団、組織を問わず、地域や歴史の記憶としてだけでなく、人々の集合的記憶を反映させていることが指摘されており、近年その学術利用の価値が再認識されている。本プロジェクトは、歴史学、美学、カルチュラル・スタディーズ、表象文化論、メディア論などのディシプリンを連携させて、地域研究における非文字資料の研究や解釈の方法について共同討議することを目的とする。この複合プロジェクトでは、東アジアを事例として、その課題にアプローチを試みるが、募集する個別プロジェクトは、その他の地域事例を検討することを望みたい。
なお、本プロジェクトで、非文字資料の表現手段やその効果が、特定の政策や機構、メディアやテクノロジーによって規定されるだけでなく、その底流には、人びとのアイデンティティや集合的記憶、国家観や時代認識など、さまざまなファクターが深くかかわってきたことに留意したい。こうした観点から、非文字資料の解釈や分析の方法論について検討を加えるとともに、非文字資料共有化の枠組みについても討議を進めたいと考えている。
研究意義:  戦争やプロパガンダ、国家建設、地域振興、社会教育、商業目的などに利用されてきた非文字資料には、人を惹きつけるデザインやコピー、各地域・民族が継承してきた表象イメージ、個性的な色使い、作り手の独創的な創作・編集方法が盛り込まれ、研究者のみならず、コレクターや好事家も惹きつけてきた。そのため、こうした資料は、対象地域ごと、ディシプリンごとに、あるいは写真、ポスター、絵はがき、レコードなどメディアごとに取り扱われてきたため、その利用の方法や解釈は多様となり、ともすれば個人的な思い、主観によって取り扱われる傾向にあった。本プロジェクトは、非文字資料を学問的に総体として解釈する方法を模索するために、地域、時代、集団、メディアを超えた、あらたな研究手法としての「地域表象情報学」の構築を試みることを意義としたい。作り手、受け手の両者にとって、非文字資料は重要な情報メディアであったと考える所以である。
期待される成果: ・教育研究機関、公文書館、資料館、博物館、美術館など、非文字資料の所蔵情報を共有化するだけでなく、非文字メディアそのものを共有する枠組みを検討する場が設定されること。
・日常空間における非文字メディアの役割、意義を検証するとともに、「地域表象情報学」という新たな方法論の構築を討議する場を設けること。
・非文字資料の学術以外の利用の価値を、社会にも伝えること。
・京都大学地域研、同人文科学研究所、財団法人東洋文庫の研究連携を促進させること。
・「地域表象情報学」を提唱するようなプロダクツ(出版物)公開に結び付けること。