シンポジウム『映画「歓待」をテツガクする―主客不分明の時代における包摂と排除』
人の移動が著しい現代社会では、自分が生れ育った場所だけで生涯を過ごす人は少数派と言えるでしょう。共同体の境界が緩やかになりつつある状況で、ほとんどの人は、自分がある土地で異邦人になる可能性も、また自分が地元民として異邦人を迎える可能性も持っています。
人はどのようにして自分が訪れた土地で「私はここにいてよい」と思えるようになり、また、他の土地から訪れた異邦人を「ここにいてよい」と思えるようになるのか。異邦からの訪問者を無条件に受け入れて歓待できるのかという問いは、形を変えながらも時代や地域を超えて問われ続けてきました。この問題は、家庭や町内会での人間関係から国籍や移民・難民の問題に至るまでさまざまなレベルでの広がりがありますが、それらは包摂と排除という観点から同じ位相で捉えることができます。
映画『歓待(hospitalite)』は、日本の下町における家族や町内会の人間関係を描きながら、異邦からの訪問客を受け入れ、相手の心のうちが読めない他人と一緒に生活の場を作っていくにはどうすればよいかという今日の世界に共通の問題を投げかけています。このシンポジウムでは、『歓待』の監督とプロデューサー・主演のお二人をゲストスピーカーに迎えて、マレーシアや台湾の経験に照らして比較しながら『歓待』をテツガク的に読み解く試みを通じて、誰が主人で誰が客かが明確に決められない混沌とした時代においていずれの立場の人も納得するような共生の手掛かりを探していきます。
■ ポスター(PDF)
■ シンポジウム概要
・日時 : 2011年3月13日(日)16:15-18:15(16:00開場)
・場所 : AP梅田大阪Aルーム(アクセス)
〒530-0002 大阪市北区曽根崎新地2-3-21 axビル4F
Tel: 06-6346-3001
・プログラム
司会 : 深尾淳一(映画専門大学院大学)
趣旨説明 : 篠崎香織(北九州市立大学)
ゲストスピーカー : 深田晃司(『歓待』監督)
杉野希妃(『歓待』プロデューサー・主演)
パネリスト : 宋[金家]琳(映画専門大学院大学)「日本の国境の”Inside & Outside”」
西芳実(立教大学)「夏希のインコ探し」
山本博之(京都大学)「花太郎に操られる輪転」
■ 『歓待』上映情報
大阪アジアン映画祭2011「特集企画 Directors in Focus : 深田晃司という才能」にて上映!
3月5日(土)12:10 シネ・ヌーヴォ
3月8日(火)21:00 シネ・ヌーヴォ
・主催: マレーシア映画文化研究会
京都大学地域研究統合情報センター共同研究
「大衆文化のグローバル化に見る包摂と排除の諸相」