日時:平成24年5月20日(日)14:00~18:00
場所:京都大学地域研究統合情報センター(京都大学稲盛財団記念館2階)213号セミナー室
場所:京都市左京区川端通荒神橋東詰(京阪電車 神宮丸太町駅下車川端通を北へ徒歩5分)
アクセス http://d0254.upu.jp/access/
主催:科学費基盤(B)「実データ(史資料)に基づく海域アジア交流ネットワークの時空間分析」(2011年~2013年)」(代表 柴山 守・地域研)
留意事項:当日は閉館のために正面玄関を閉じています。正面玄関に貼り出す案内図に従ってお入りください。参加費無料、事前予約なし。
話題提供:
(1)研究会趣旨 柴山 守(京大地域研)
(2)アジアの海の近代化研究に向けて-灯台は、近世と近代、日常世界と異世界のはざまに建つ-
谷川竜一(京大地域研、建築史)
(3)「東南アジア史における交易網と中継港の役割」に関する研究成果とその発展可能性
川村朋貴(富山大学、経済史)
(4)総合討論
科研概要:主に17世紀~20世紀に至る唐船に関する諸記録と交易品資料、琉球外交文書、中国海関統計資料、陶磁器発掘考古資料、近世貿易関係係数資料、華人・華商ネットワークなどの史資料や研究成果から提示される中国、日本、朝鮮、台湾、トンキン、暹羅など東・東南アジアを対象にした実データを”歴史GIS”の研究手法により時空間の視点で重層化して、「海域アジア」という視座から俯瞰し、海域交流ネットワークのダイナミクスを探る。実データのマッピング及び分析では、歴史観など計量不可能な記述・論述的情報ともリンクして可視化を試み、GIS空間分析や時空間ネットワーク分析を行う。これらの通時分析によって、従来の通説や仮説の比較・検証と比較・検討の可能性を探る。
この共同研究の根底には、各港別統計資料群を「横断的」に総合することによって理解可能となる「東南アジア域内交易網」の実証研究が、いまだ存在していないという強い問題意識があった。そのことを踏まえて、本共同研究は18世紀末から20世紀初頭において、中継港を媒介にして急速に形成された東南アジア域内交易史という新しいフィールドの開拓を目指してきた。それは同時に、国民国家史の枠組みにとらわれず、東南アジアを一つの単位とみなすような歴史概念を構築する試みでもあった。以上の点に関して、本報告では、メンバーによる研究成果の一部を紹介したい。
報告概要
(1)アジアの海の近代化研究に向けて-灯台は、近世と近代、日常世界と異世界のはざまに建つ-
谷川竜一氏(京大地域研、建築史)
:19世紀半ばから東南アジア、東アジアの各地で、近代的な照射装置を積んだ西洋式灯台の建設が始まった。灯台の背景にあるのは経緯度という座標系ですべての空間を捉える世界観であり、近代的な航路網の発達には欠かせないものである。こうした見方の転換を促す動きを「海の近代化」と見立てれば、1920年までに東南アジアから東アジア海域に建てられた灯台の総数中、約3割を建設した日本は、海の近代化に大きな「貢献」を果してきた。ただし、大変興味深いのは、そうした灯台はいきなり建ったわけではない。それに先行する近世以前の技術による伝統的な灯台が、日本はもちろん、アジア各地にあったと考えられる。
海の近代化が起こる時、どのような近世と近代のバトンタッチが地域社会で起こっていたのか、そしてそれは日本やアジア全体で見るとどのような意味を持っていたのか、ということを灯台の建設史を通じて検討してみたい。
(2)「東南アジア史における交易網と中継港の役割」に関する研究成果とその発展可能性
川村朋貴氏(富山大学、経済史)
:本報告では、東南アジア研究所共同利用・共同研究拠点「東南アジア研究の国際共同研究拠点」の萌芽研究(2010-11年度)として採択された「東南アジア史における交易網と中継港の役割」(研究代表:川村朋貴)の概要を説明し、おもにイギリス側から接近できる19世紀東南アジア貿易史の一次史料群とその利用方法を紹介したいと考えている。
(柴山 守)