世界の諸地域の様子や動向をどのようにすれば捉えることができるのか。これは、人類が自分たちと異なる人々への関心を向けたときから取り組んできた課題であり、グローバル化が進む現代世界でますます重要性を増している課題です。この課題に対し、学術研究の分野では、統計資料や公文書、聞き取り調査や手記、新聞等のメディア情報や研究文献などを収集し、分析してきました。 こうした分析方法の重要性は今後もなくなりませんが、今日では、世界の新しい状況に対応し、従来の手法に加えて次の4 つの工夫が必要になると考えられます。
今日では、国境を越えた人や物や情報の動きが容易になり、大量の動きが見られます。公文書や統計資料は国別に様式や詳しさが異なっており、そのまま繋げられないこともあるため、様式や詳しさが互いに異なる情報をどのように繋げるかという工夫が必要となります。
統計資料や文献資料は依然として基本的な情報ですが、社会が多様化し、情報技術の発達により様々なメディアが登場したこともあり、図画・映像・建築物・音楽のように従来は各専門分野でのみ使われてきた情報も取り入れて人々の暮らしや考え方を捉える必要があります。
情報通信とりわけインターネットの発達に伴い、大量のデータが容易に利用可能となりました。構造化されていない巨大なデータ(ビッグデータ)を短時間に処理し、対象の傾向を大掴みで読み解くことが、現在では必要とされています。
研究する側とされる側が明確に区別される時代は幕を閉じ、今日では研究する側とされる側が「地続き」になっています。どのようなデータベースを構築するかは、純粋に学術的な関心の問題では済まず、データベースの設計段階から現地社会と共同で取り組むことも必要となります。
地域研は、地域情報学プロジェクトのもと、各スタッフがそれぞれの研究関心に即して具体的な資料をもとにデータベースを作成しながらこれらの課題に取り組んでいます。実験的なものを含め、2014年9月の時点で計42のデータベースやツールが作成・開発されています(非公開のものも含む)。
人々が日常生活の中で見聞きしたり利用したりすることで人々の行動や考え方に影響を与えているものの、従来の研究では十分に利用されてこなかった形態の情報データベース。
専門的な知識や技術を必要とせずにデータベースの構築と公開を実現するためのMyデータベース・システム。
インターネット上に分散しているデータベースの統合検索を目指した地域研究資源共有化データベース。
地域研究資源共有化データベース(Resource Sharing Database for Area Studies)
地域研究資源共有化データベース:多言語対応試行版(Resource Sharing Database for Area Studies: Multilingual Trial Version)
時間処理も可能な地理情報の可視化・分析ツール用HuMapおよび時間情報の可視化・分析用ツールHuTime。
歴史地名辞書データベース、暦間の日付変換ツール、および地図データベース。
語彙の意味・構造に注目してデータを関連付けることにより資料群を可視化したり検索したりするツールであるトピックマップ。具体例として、日本図書館協会および国立国会図書館の件名標目表、農林水産関連分野の語彙集(AGROVOC)、世界各地の民族・社会・文化に関する文献語彙集(HRAF)、漫画『花より男子』各言語版のトピックマップなど。