災害が発生したとき、現地語オンライン情報を用いて被害と救援の状況を地図上で示すシステム。首都から発信される報道や情報では十分に伝えられてこない被災地の状況を地方メディアの情報を活用することで、被害の規模や救援のために必要な情報を収集し、地図上で表現することで、被災地の被害の全体像を速やかに視覚的に捉えることができる。新聞社などによってオンライン上で発信される報道記事を自動で収集し、記事中の地名をもとにテーマ別に地図上で表現する。現在はインドネシアの全国紙の記事をもとに、アチェ州と西スマトラ州について、自然災害、紛争・事件、選挙などのテーマで記事を収集し、提示している。人道支援への応用が期待される。キーワードを変えることで事件・事故や紛争、政変などにも応用可能。
2004 年12 月に発生したインド洋津波(スマトラ島沖地震・津波)の被害と救援・復興の経年変化の様子を地図上で示すシステム。震源に最も近く、約16 万5000 人の死者・行方不明者を出したインドネシア共和国アチェ州を対象に、現地語メディアでの報道記事や写真を地図上で表現し、それらをスマートフォンなどの携帯端末で参照可能にすることで、アチェの街並みに重ねて被災と復興過程を記録・参照することができるようにしたもの。被災や復興の過程を示す遺物や痕跡が人々の日々の生活の中でどのように使われ変化していくかを記録し、参照可能にすることで、時代や地域を越えて災害の体験を語り継ぐためのメディアであり、モバイル端末を使って街全体を「博物館」にする試みでもある。ツーリズムへの応用が期待される。
災害地域情報マッピング・システムを、将来起こりうる災害や社会問題の早期発見と拡大の予防に応用しようとするもの。
一般に、一度に多くの人々が亡くなる災害は社会の関心を集めやすいが、大雨などによって道路や橋が壊れて通行不能になったり、干ばつや虫害などによって不作だったりするなど、ただちに死傷者が出ないような小規模な「災害」は社会の関心をあまり集めず、十分な対策が講じられないままとなることも少なくない。しかし、このような小規模な「災害」が放置され、それが積み重なると、社会の脆弱性が増して「災害」への対応力が低くなるだけでなく、社会関係の調整能力の低下を招き、さまざまな社会問題が生じる原因ともなる。
本システムは、災害地域情報マッピング・システムを応用して、小規模な「災害」や社会問題の発生およびそれへの対応の様子について知らせるものであり、これにより行政当局がこれらの問題に適切に対応することを促す役割を果たす。なお、このシステムは、災害地域情報マッピング・システムの応用についてインドネシア側と協議する過程でインドネシア側から出された提案に基づいて検討されているものである。