代表: | 梅川通久(京都大学地域研究統合情報センター・研究員) |
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共同研究員: | 西村千(独立行政法人森林総合研究所・特別研究員)、星川圭介(京都大学地域研究統合情報センター・助教)、米澤剛(京都大学生存基盤科学研究ユニット・研究員) |
期間: | 平成21年6月1日~平成22年3月15日 |
目的: | 人の移動や人口分布は、地形・環境・社会的な要請その他様々な要素により決定され、特定の研究分野の研究成果のみで完全に説明することは難しい。そこで、調査や情報学的手段で蓄積された多くの分野の情報を統合的に分析することが必須となるが、その為には分野を超えた言わば「共通言語」として定量解析的手法を用い、全ての情報を数値化されたデータとして取り扱って客観的分析を行った後に、定性的評価へと還元する方法が有効である。本研究ではこの様な考え方に立ち、ベトナム等をはじめとする東南アジアにおけるいくつかの地域を対象として、現地調査、データベース、リモートセンシング等により集積された、生態学・都市工学・文化人類学等様々な分野に由来する地理的な数値情報を、「人口密度ポテンシャル」の算出の為の定式化された数値モデルを主軸として統合的に取り扱うことにより分析を行う。これにより、人口分布や人口移動とそれらを決定する複合的外的要素との関連を明らかにする。またその手法を発展させ、本研究で行う様な人口分布問題に留まらない、地域・分野・対象を越えた、数値解析手法を用いた統合的研究の将来的拡大を模索する。 |
研究の意義: | 本研究の活動からはこれまでの研究手法では難しかった、人口分布やその流動に対する分野を超えた外的要素による複合的な作用の分析を行うこと、手法としての定量解析的研究の発展とそれを用いた地域研究手法が確立されること、地域情報学研究の成果と地域研究の現場との接点確立の一助となること、の3つの意義が見出される。 特に東南アジア地域では、これまでも歴史的なものから短期的なものまで人口動態や人の移動に関する多くの議論がなされ、また本研究の研究メンバーが対象とする地域とも重なるなどの好条件が揃っており、本研究を進める事により、人口密度分布や人口移動についての複合的な影響の分析や、将来の動向予測に関する客観的提案が可能となる。また手法研究としての側面からも、地域情報学の考え方による成果が地域研究を実践する側の研究者によってより効果的に享受できる為の一助となることや、地域間比較・相関地域研究等広域的地域研究の一手法として発展すると考えられる。 |
期待される成果 将来の展開 について: |
本研究の成果として非線形計算を元にした人口ポテンシャル等の新しい指標を算出することにより、地理学・地域研究への基礎科学的貢献の他、社会的問題への具体的提言や人文地理学・文化人類学などで議論される諸問題への恣意を排除した新たな提案など、様々な波及効果が有り得る。また具体的な本研究のテーマに対する成果の他、定量解析的手法自体の確立と発展による、従来とは異なる視点での分析・新たな研究題材の発掘等につながる様な、方法論的な成果の創出も期待される。さらに、本研究メンバー自身の研究活動も含む、自然科学系分野や情報学系分野での研究テーマの拡張や他分野との新しい相互連携の可能性等について、異なる分野の研究情報が一同に介する事による相乗効果が期待される。 将来は、文部科学省科学研究費補助金や貴センターの研究プロジェクトへの参加を通じて、人口問題への具体的言及をはじめとする定量的な成果から定性的な成果への移行と、方法論の側面から、地域研究における定量解析・数値解析の手法による新たな研究開拓や新規の研究手法の普及などを見込み、地域や分野を超えた様々な知識や技術の連携と「共通言語」としての定量解析が普及するきっかけとする。 |
研究実施計画: | 各研究メンバーが得意とする担当分野である、リモートセンシング技術に関する関連調査・GISを活用した都市工学的な情報分析・土地利用や生態に関する現地調査等により収集されたデータ等を元として、研究代表者がこれまでに確立した人口密度ポテンシャルの非線形計算などの方法を適用する。その結果として複合的な外的要因と人口密度分布との関連を数値的に示し、それをもって第一段階の結果とする。次段階以降では定性的な議論を行い、新たな特徴の抽出や現状との比較を通じて、人口分布の現状とその理由の推測、社会的問題への提言など、成果の将来的な適用を模索する。 数値解析の適用と並行して、研究メンバーが担当する個別の小テーマにそった、4回前後の研究会を貴センター施設を利用して開催する。定量解析的な地域研究手法という総合テーマの下で、それぞれGISと都市工学、リモートセンシング等の個別テーマにそって、定量解析的研究のこれまでの成果と手法の詳細について、メンバー本人や評価の高い研究を実施している研究者を招き、報告をする。盛記念館小・中会議資質程度の規模で一般参加者に聴講してもらう公開研究会とし、招待講演者は各回を担当する研究メンバーによる選択とする。最終回では本研究の成果の主たる報告に加え、例えば人文科学系分野などを対象とした定量解析的な手法の適用、それを活用する新たな研究の切り口といった問題に関連する討論等も構想している。 |
研究成果の 公開計画: |
創出される成果は、各メンバーの研究成果出版および、本研究で行われる公開研究会などの方法を通じて公開される。各メンバーの出版では、おのおのが推進する研究が本研究の活動との関連でどの様に発展したかを明らかにしつつ、論文執筆や学会・研究会等での講演の形で成果公開を行う。また本研究グループ全体としては、研究会開催の他にワーキングペーパー・ウェブサイト等を活用し、積極的情報公開活動を行う。研究会は実施計画の通り研究期間中に行う。各メンバーの出版については、それぞれの研究の進展に応じて適宜行われる。研究期間後半から終了後にかけて、ウェブサイト・ワーキングペーパー等への取りまとめ作業を行い、順次公開する。 |
関連 プロジェクト: |
具体的に主催するものはないが、H-GIS研究会やその他地域情報学関連グループとの連携をとりながら、情報の交換を行いたい。 |