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マレー語雑誌『カラム』データベースを利用した研究(h21)

過去の研究プロジェクト

マレー語雑誌『カラム』データベースを利用した研究(h21)

地域研萌芽研究
代表: 山本博之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 國谷徹(愛知大学等・非常勤講師)、坪井祐司(学習院大学等・非常勤講師)、菅原由美(天理大学国際文化学部・講師)
期間: 平成21年6月1日~平成22年3月15日
目的:  地域研が公開するマレー語雑誌『カラム』の記事データベースを利用した研究を行う。『カラム』は海域東南アジアの現代史を再構成する上で重要な資料であり、地域研のデータベースとして欠号率が低い状態で公開されているが、ジャウィ表記(マレー語のアラビア文字表記)のために利用可能な研究者が限られている。これまで個人の努力によって本文のローマ字翻字が一部行われてきたが、本研究課題では謝金によりローマ字翻字を進めることで、ジャウィ表記を利用可能な研究者を増やすとともに、『カラム』をより多くの研究者に利用可能な形にすることを目的とする。本研究課題の作業を通じて、本文検索を可能にすることにより『カラム』記事データベースの内容がさらに充実することが期待される。また、翻字を通じて『カラム』記事データベースを実際に活用した研究を行う。
研究の意義:  近年、国内外で東南アジアのイスラム教/ムスリムに関する研究が増えているが、それらの多くには中東のイスラム教/ムスリムとの結びつきを強調してその中に東南アジアのムスリムを位置づけようとする特徴が見られる。しかし、中東にイスラム教の「原典」があるとしても、それを参照するだけでは東南アジアにおけるムスリムの実態やイスラム教の実践を把握することはできない。特に、多民族・多宗教の混成社会である東南アジアにおけるムスリム社会を理解するには、東南アジア社会の文脈において捉える必要がある。今日の東南アジアのイスラム教/ムスリムを理解する上でも、国境を超えた東南アジア域内の連絡が密であった1950年代から60年代にかけての時期を理解することが重要である。1950年代の海域東南アジアでは日刊紙は国別のメディアとなっていたが、雑誌(特にイスラム系雑誌)は国や地域を超えて相互に記事を参照しあい、議論を行っていた。国境を超えて相互の政治過程を参照しあっていた状況を踏まえた総合的な研究を行うためには、発行国・地域を超えてマレー・インドネシア語の雑誌を参照することが必要になる。そのために構築されたマレー・インドネシア語雑誌横断検索システムを実際に用いた研究を行う。
期待される成果
将来の展開
について:
 翻字を通じて地域研が公開するマレー・インドネシア語雑誌データベースを発展させ、マレー・インドネシア語文献の国際的なデータベース・プロジェクトの主要な構成部分とすることが期待される。マレー・インドネシア語の出版物データベースは、現在、オーストラリア国立大学(ANU)、シンガポール国立大学(NUS)、京大地域研の3つの機関によって進められている。ANU(20世紀初頭までの王統記・口承等が中心)とNUS(1930年代の定期刊行物が中心)では本文の翻字が進められており、一部はマレー語文献コンコーダンスとしてウェブサイト上で公開されている。現在、地域研(1950~60年代の定期刊行物が中心)では記事見出しの翻字と本文イメージが公開されているが、さらに本文の翻字を進めることでANUおよびNUSのプロジェクトと統合してマレー・インドネシア語出版物データベースの主要な部分を構成することができる。
 本萌芽研究の来年度以降の展望については、科研費等によって実施する可能性を探るとともに、地域研に現行の公募共同研究の複合ユニットとは別に「CIASデータベースを利用した研究」(仮称)のような枠組を作り、そのなかで地域研が公開するデータベースを実際に利用した研究を進める体制を整えた上で、本研究課題のような研究プロジェクトが実施されることを期待する。
研究実施計画: ① ジャウィ講習会
 2009年6月または7月、マレー・インドネシア語の中級以上の既習者を対象に、ジャウィ文献講読の講習会を開催する。参加者を募集して1泊2日の日程で行う。会場は東京とするが、十分な数の希望者がいれば京都でも行う。
② ローマ字翻字
 ジャウィ講習会の参加者のうち希望者に『カラム』の記事のローマ字翻字を依頼する。1人当たり10万円を上限として謝金により翻字を行う。対象者は、博士課程在籍中あるいは修了と同程度の研究実績があり、現在定職に就いていない研究者を想定している。翻字に関する検討は主に電子メールを利用して行う。翻字の提出期限は2009年12月末。
③ ジャウィ文献を用いた研究
 前項の翻字プロジェクトの参加者には、翻字の提出に加え、担当した翻字部分を中心にジャウィ文献を利用した研究成果の提出も求める。翻字提出後に東京(および京都)で研究会を行い、各参加者の研究内容を検討する。この研究会には翻字プロジェクトに参加していない研究者にも参加を求める。翻字プロジェクトの参加者は、研究会での検討をもとに2010年2月末までに研究成果を論文・研究ノート等の形で提出する。
研究成果の
公開計画:
 参加者による論文・研究ノート等をまとめたものを2010年4月頃にディスカッション・ペーパーとして刊行する。