代表: | 原聖(女子美術大学芸術学部・教授) |
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共同研究員: | 網谷龍介(明治学院大学国際学部・准教授)、伊藤武(専修大学法学部・准教授)、小川有美(立教大学法学部・教授)、小森宏美(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、定松文(恵泉女学園大学・准教授)、三枝憲太郎(関西大学政策創造学部・准教授)、佐藤雪野(東北大学大学院国際文化研究科・准教授)、佐野直子(名古屋市立大学大学院人間文化研究科・准教授)、新城文絵(立教大学法学部・博士課程)、仙石学(西南学院大学法学部・教授)、竹中克行(愛知県立大学外国語学部・准教授)、中力えり(和光大学人間関係学部・講師)、鶴巻泉子(名古屋大学大学院国際言語研究科・准教授)、富田理恵(東海学院大学人間関係学部・准教授)、中田瑞穂(名古屋大学法学研究科・教授)、中野裕二(駒澤大学・准教授)、萩尾生(名古屋工業大学国際交流センター・准教授)、浜井祐三子(北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院・准教授)、平田武(東北大学大学院法科研究科・教授)、宮島喬(法政大学・客員教授)、横田正顕(東北大学大学院法学研究科・教授)、若松邦弘(東京外国語大学外国語学部・准教授)、若林広(東海大学教養学部・教授) |
期間: | 平成19年4月~平成21年3月 |
目的: | 国民=領土=国家という三位一体の神話の崩壊は、とりわけ国民国家の相対化が進むヨーロッパで、1960、70年代ごろから表面化してきた。国民国家は拡大と分権の両方向に引き裂かれつつあるように見える。にもかかわらず、21世紀に入った現在でもなお、国民国家がその根強さを示しているのはなぜか。この問いに答えを見つける手がかりとして、「ナショナリティ」と「テリトリアリティ」という概念について考えることが本研究会の目的である。 ネイション概念のとらえかたにもよるが、そもそもネイションと領域は歴史的に国家の枠組みと完全に一致しているわけではなかったし、現在でも一致していないともいえる。歴史の共有から生じるわれわれ意識がネイションを支えてきた側面もあるように、むしろ、国家という歴史的に創り上げられた政治的共同体が、その一元性を保つために、「ナショナリティ」と「テリトリアリティ」を支配することで、ネイションと領域を規定してきたとみることもできよう。 ネイションや領域と国家との連関は、国際統合過程を重視するEU研究の中ではなかなか見えてこない。他方で、EU統合やグローバル化の影響を受けて複数の国やネイションに生じたある程度共通の変化を読み取るには、各国別・ディシプリン別の研究だけでは十分ではない。そのため、本研究会では、研究対象とディシプリンをクロスして検討することを試みた。 |
研究実施状況: | -平成19年度- 本年度は次の通り研究会を2回実施した他、研究成果公開に関する打合せ等を行った。 ●第1回2007年6月2日(東京外国語大学本郷サテライト) ・鳥羽美鈴氏(一橋大学・院)「フランスにおける〈スカーフ禁止法〉施行後の実態と分析」 ・三枝憲太郎氏(関西大学)「新しい場所と土地の記憶―イングランドにおける国内移住者と土地との結びつき」 ●第2回2007年10月20日(京都大学地域研究統合情報センター) ・萩尾生「スペインにおける領域区分―自治州構成原理とその史的背景」 ・長谷川秀樹「地位改革法成立(2002年)以降のコルシカ島の地域政策とその方向性 -平成20年度- 本年度は次の通り、研究会を1回、シンポジウムを1回、実施した。 ●2008年5月31日(東京外国語大学本郷サテライト) ・川橋郁子氏(早稲田大・院)「スコットランドとウェールズにおける分権要求の比較歴史分析―行政権限委譲と分権要求運動の連関」 ・北住炯一氏(愛知学院大学)「戦後ドイツ連邦制の形成と対抗的選択肢」 ●2008年10月4日(愛知県立大学) ・公開シンポジウム「ヨーロッパのナショナリティとテリトリアリティ」 |
研究成果の概要: | -平成19年度- 本年度の研究会では、フランス、イギリス、スペイン、イタリアと、ヨーロッパの主要諸国を対象とする事例報告が行われたことから、比較の視点が得られた。すなわち、国家と地域との関係を規定する現在の制度への歴史の影響の度合い、EUの制度の変更に伴う国家及び地域への影響、地域とナショナリティの関係がその主なものである。例えば、スペインやフランスはその歴史的経緯から、地方制度の形成においてはナポレオン時代の影響が強いのではないかと考えられるにもかかわらず、予想以上に違いが大きいことがわかり、その説明には、ヨーロッパの他の複数の諸国との比較により、別の要因を導き出す必要がある。さらにEUとの関係では、EUの法制度が国家や地域の制度をどの程度規定するのか、あるいは逆に、国家や地域の制度がどの程度EUの法制度に反映されるのか、今後議論すべき点が明らかになった。 -平成20年度- 限定されたメンバーで集中的に議論を行うのか、あるいは、むしろネットワーク作りと課題発見に主眼を置くのかは、研究会を組織運営する上で常に悩ましい問題である。本研究会は、ヨーロッパ研究(というものがあるとして)の現状を考え、むしろ後者に力点が置かれた。むろん、4.に記した所期の問題設定に対しては十分検討できるよう、シンポジウムという形式もとった。そのシンポジウム開催に当たって愛知県立大学多文化共生研究所の全面的な協力を得たという意味では、これまでのネットワーク作りを生かすことができた。 共同研究を通じて明らかになったのは、現在のナショナリティが含意する多義性と、ナショナリティとテリトリアリティの関係が極めて多様あること、しかし同時に、EU統合の影響としてのヨーロッパ化やグローバル化などの作用を媒介として、そこに一定の潮流も存在するという点である。 |
公表実績: | -平成20年度- 10月4日に開催したシンポジウムの報告と、研究会での報告を所収したディスカッションペーパーを刊行した。 |
研究成果公表計画 今後の展開等: |
上位に位置づけられる複合ユニット「リージョナリズムの歴史制度論的比較」の議論に貢献しつつ、本研究会の成果を踏まえた後継プロジェクトの検討を行う。 |