代表: | 脇村孝平(大阪市立大学大学院経済学研究科・教授) |
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共同研究員: | 大石高志(神戸市外国語大学外国語学部国際関係学会・准教授)、押川文子(京都大学地域研究統合情報センター・教授)、川村朋貴(富山大学人文学部・准教授)、神田さやこ(慶応義塾大学経済学部・准教授)、木谷名都子(名古屋市立大学大学院経済学研究科・専任講師)、島田竜登(西南学院大学経済学部長・准教授)、谷口謙次(大阪市立大学大学院経済学研究科・後期博士課程)、西村雄志(松山大学経済学部・准教授)、藤田拓之(同志社・文・博士後期)、水野祥子(九州産業大学経済学部・講師)、三瀬利之(国立民族学博物館・共同研究員)、藪下信幸(近畿大学経営学部商学科・准教授) |
期間: | 平成19年4月~平成21年3月 |
目的: | この研究会は、英国議会資料を一つの巨大な情報群として捉え、その情報の特質を研究・分析することを目標とする。英国議会資料は、言うまでもなく、英国議会への説明責任に発して形成された情報群である。一見、とりとめのない膨大な情報群のように見えるが、極めて選択的な情報群であるとも言えるのではなかろうか。もちろん目的意識的な選択性と言うよりは、結果として現れている選択性をここでは問題にしている。そのような意味で、こなれない言葉であるが、<情報選択性>という概念を提起したいと思う。具体的には、英領インドを事例として取り上げ、研究会メンバー(何らかの形で英領インドに関わる歴史研究を行っている研究者)が、自らの研究が関わっている問題領域に関して、<情報選択性>という仮説的な方法概念を意識して、英国議会資料の情報としての特質を検討する。 |
研究実施状況: | -平成19年度- 2007年6月23日(土)に本年度第一回の研究会を行なった。「近世アジア貿易とヨーロッパ」というテーマで行なわれ、以下の報告がなされた。島田竜登氏(西南学院大学)「オランダ東インド会社のアジア間貿易」;藪下信幸氏(近畿大学)「アジア域内交易網形成期におけるイギリス東インド会社とアジア商人-17世紀グジャラート地方を中心に」;岩井茂樹氏(京都大学)「『互市』と『朝貢』からみた近世東アジアの国際商業」;長島弘氏(長崎県立大学)「17-18世紀インド・グジャラート地方の国際港市社 会と国家-研究史の回顧と展望」。 第二回研究会は、2007年12月22日(土)に行なわれた。以下の報告がなされた。籠谷直人「華僑ネットワークからみた帝国と制度」;神田さやこ「塩密売人摘発をめぐる情報戦とEICの「治安」対策-18世紀後半~19世紀前半期ベンガルを対象として」;三瀬利之「『英領インド国勢調査資料』の情報選択性-国勢調査局の意思決定プロセスの分析から」。 -平成20年度- 第一回研究会は、2008年7月26日(土)に京都大学・地域研究統合情報センターにおいて催され、以下の報告がなされた。脇村孝平(大阪市立大学)「コレラ・検疫・イギリス帝国:BPP・WEB版を使って」、川村朋貴(富山大学)「BPPのなかの銀行と帝国」。 第二回研究会は、2009年1月24日(土)に同じく京都大学・地域研究統合情報センターにおいて催され、以下の報告がなされた。木谷名都子氏(名古屋市立大学)「WEB版英国議会資料にみる綿とイギリス帝国」、藤田拓之氏(同志社大学)「帝国と居留民―1930年代の上海共同租界工部局市参事会選挙を中心に」。 |
研究成果の概要: | -平成19年度- 研究報告は大別して二つの傾向に分かれた。第一は、キーワードとして掲げている情報を意識してなされた諸報告である。残された資料群の性格を、それを残した制度(例えば、官僚組織)の検討とともに行う作業である。必ずしも英国議会資料に限られなかったが、このような作業によって、単に形式的な分析にとどまらず、イギリス帝国(あるいはイギリス植民地主義)の統治における特質を顕著に浮かび上がらせることが確認された。第二は、もう一つのキーワードである帝国を意識してなされた諸報告である。これらの諸報告を通して明らかになったのは、イギリス帝国における英領インドの基軸的な位置である。このこと自体は半ば自明のことであるが、今回の研究会で鮮明になったのが、19世紀のイギリス帝国においてインド洋が有する重要性であった。インド洋を主題に据えて、英国議会資料の<情報選択性>を考えてみると、これまでにはない視野が開けるのでないかと感じられた。 -平成20年度- 本年度の目標は、英国議会資料(BPP)Web版を使用した実験的作業を実践することにあった。上記の報告のうち、脇村、川村、木谷の報告は、各人が自らの研究の中で重要なキーワードを、BPPWeb版の検索機能において使用することによって、BBP資料群の特徴を把握しようとする作業であった。例えば、脇村の場合には、「コレラ(cholera)」というキーワードを使用して、資料の本文中において、「コレラ」という単語のヒット件数(同一資料の本文中に登場する回数)が比較的多いものを選び出し、それらを時期別・地域別・テーマ別などを基準に分類した。特に、イギリス帝国のうちで本国を除く部分に合わせつつ、上記の検索機能を使用して、BPP資料群が、如何なる時期に、どのような問題をカバーしているのかといった諸点を明らかにした。資料の内容に踏み込む以前の外形的な検討作業であるとはいえ、BPP資料群の特徴を把握する上で有効な作業であることが確認された。 |
公表実績: | -平成19年度- 論文: 大石高志「インド人商人のネットワーク-広域秩序と雑貨・食糧品ビジネス」遠藤乾編『グローバル・ガバナンスの最前線-現在と過去のあいだ』東信堂、2008年。 Sayako Kanda, ‘Merchants, institutions and the market: changes in the salt trade in early colonial Bengal’, Discussion Paper 08-02, January 2008, Graduate School of Economics and Osaka School of International Public Policy (OSIPP), Osaka University. 脇村孝平「国際保健の誕生-19世紀におけるコレラ・パンデミックと検疫問題」遠藤乾編『グローバル・ガバナンスの最前線-現在と過去のあいだ』東信堂、2008年。 脇村孝平「長期の19世紀-インド系企業家の系譜」『南アジア研究』第19号、2007年。 学会: 社会経済史学会・近畿部会サマー・シンポジウム「近世アジア貿易とヨーロッパ-世界史像の転換をめぐって」(本研究会のメンバーとして、島田竜登、藪下信幸、神田さやこ、脇村孝平が報告ないしはコメントをした) -平成20年度- 論文: ・ 川村朋貴「アジア海域世界のイギリス帝国―シンガポールを事例にして(1819~67年)―」濱下武志監修 川村朋貴・小林功・中井精一編『海域世界のネットワークと重層性』桂書房、2008年。 ・ 川村朋貴「『老練な中国通の人びと』の帝国―香港上海銀行の創設をめぐって(1864~1867年)―」『立命館文学』604号、2008年。 ・ Sayako Kanda, ‘Coal, Firewood and Plant Stalks: Availability of Fuel and Development of Industries in Early Nineteenth-Century Bengal’, Kyoto Working Paper on Area Studies, No.55 (G-COE Series, No.53), February 2009. ・ 木谷名都子「両大戦間期インドにおける農業繁栄と工業発展 ―1926年・1932年関税委員会による政策提言を通して―」『パブリック・ヒストリー』第6号、大阪大学西洋史学研究室、2009年。 ・ 藤田拓之「上海共同租界行政とイギリス人」(濱下武志監修、川村朋貴・小林功・中井精一編『海域世界のネットワークと重層性』桂書房、2008年。 ・ 三瀬利之「近代官僚制の文書主義:文書機能論からみたその合理性」斎藤晃編『テクストと人文学』人文書院、2009年。 ・ 水野祥子「大戦間期イギリス帝国におけるグローバルな環境危機論の形成」『史林』92巻1号、2009年。 ・ Kohei Wakimura, ‘Health Hazards in 19th Century India: Malaria and Cholera in Semi-Arid Tropics’, Kyoto Working Papers on Area Studies No.9 (G-COE Series 7), October 2008. 学会発表等: ・ Organiser: Sayako Kanda, An International Workshop on ‘Changes of Local Market Institutions in the Age of Global Trade Expansion: Asia and North America in the 19th and 20th Centuries’, Keio University, 15-16 March 2009. |
研究成果公表計画 今後の展開等: |