代表: | 松田正彦(立命館大学国際関係学部・准教授) |
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共同研究員: | 落合雪野(鹿児島大学総合研究博物館・准教授)、白川千尋(国立民族学博物館先端人類科学研究部・准教授)、柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)、横山智(熊本大学文学部・准教授) |
期間: | 平成21年4月~平成22年3月 |
目的: | 東南アジア大陸部山地では、近年、市場経済や中央政府政策の浸透が顕著で、膨大な人やモノの流入(インフロー)にさらされている。その結果、域外に出て行くモノ(アウトフロー)が質・量ともに大きく変化し、それらを生み出す生態的基盤や在来知の蓄積(ストック)は役割の転換を迫られていると理解できるかもしれない。また、この一連の変化は地域社会の社会・環境問題と多分に関与しているだろう。本研究では、東南アジア大陸部山地における自然資源に依存した生業とその変容メカニズムを読み解く上で、フローとストックの観点から分析することの有効性を明らかにする。さらに、資源に文化的・社会的価値が付与されることによる新しいフローの創出についての現代的な意味を検討し、自然資源の持つ多面的な価値と機能について考察する。 |
研究実施状況: | -平成21年度- 予算が配分されなかったことから、メンバーの間で5回の内部研究会を実施し、共同研究ワークショップ「移植される世界、交雑する地域─「21世紀の『国家』像」プロジェクト総括」の準備を行った。 |
研究成果の概要: | 計3回の国内共同研究会を開催した。主な議論内容は、既存のストック概念や関連する理論的枠組みのレビュー(①)、現地調査で得た具体的な事象のストックとフローの観点からの分析(②)、新たなストック概念の検討(③)である。個別の報告タイトルは下のとおりで、対応する内容の番号を付した。また、研究を補完するために招聘した共同研究員メンバー以外の話題提供者名に下線を付けた。 第1回共同研究会(於京大地域研、2009年7月10日) ・自然資源利用における「ストック」と「フロー」―ストック概念再検討のたたき台1(①)(松田正彦) ・シャン・カチン地域における自然資源利用―衣類の素材に着目して(②)(落合雪野) ・シャン・カチン地域における自然資源利用―カントンアブラギリに着目して(②)(田中耕司) 第2回共同研究会(於京大地域研、2009年10月31日) ・技術とデザインのストック、素材と製品のフロー―「着るもの」の変容をめぐる試論(②)(落合雪野) ・Economically Useful Plantsはストック資源か、それともフロー資源か?(②)(田中耕司) ・ストック概念の再検討―Panarchy論の接合可能性(①③)(横山智) ・自然資源利用における「ストック」と「フロー」―ストック概念再検討のたたき台2(③)(松田正彦) 第3回共同研究会(於名古屋大学、2010年3月1日) ・ストック・フロー構造の把握による中山間地域の持続可能性検討フレーム(①③)(宮田将門・名古屋大学大学院環境学研究科) ・自然資源利用における「ストック」と「フロー」―北部ベトナムを事例としたストック概念の再検討(②③)(柳澤雅之) 加えて、国外研究会としてミャンマーで国際セミナーを開催した。首都ネピドーの農業灌漑省においてミャンマーや近隣諸国の自然資源利用の実態と課題について、関係省庁のスタッフを招き議論した。話題提供者とタイトルは下の通りである。共同研究員メンバー以外の話題提供者には下線を付けた。 International Seminar “Natural Resource Management Issues in Myanmar” (2009年8月22日) (1) Koji Tanaka, Kyoto Univ., “An Oil-Producing Plants in the Border Region between Northeastern Myanmar and Southwestern China” (2) Masahiko Matsuda, Ritsumeikan Univ., “Intensive Rice Farming in China Border of Northern Shan State” (3) Satoshi Yokoyama, Nagoya Univ., “Changes in Land-use and Local Livelihoods near Chinese Border Areas in Laos” (4) Yukino Ochiai, Kagoshima Univ., “Natural Plant Resources from Everyday Life to Markets” (5) Gianluca Bonanno, Ritsumeikan Univ., “The Greater Mekong Sub-region: A Thoughtful Insight” (6) Koichi Fujita, Kyoto Univ., “New Book, Economic Transition in Myanmar after 1988: Market Economy versus State Control (2009)” また、研究会メンバーの一部は日本熱帯生態学会や日本熱帯農業学会などで研究成果を報告し、関連分野の研究者との意見交換をおこなった。 |
公表実績: | <論文等> 白川千尋(2009)「旅・いろいろ地球人-モノを見る目④ラオスの蚊帳」『毎日新聞大阪本社版夕刊』2009年4月22日. 横山智(2009)「ラオスにおけるバックパッカー地区の形成」 神田孝治(編)『観光の空間―視点とアプローチ―)』 ナカニシヤ出版, pp.78-88. 横山智(2009)「ラオス焼畑民の変容」 春山成子・藤巻正己・野間晴雄(編)『朝倉世界地理講座第3巻 東南アジア』 朝倉書店, pp.196-206. Yokoyama, S. (2009) Siam Benzoin, in Akimichi, T. (ed.) An Illustrated Eco-history of the Mekong River Basin. Bangkok: White Lotus, pp.151-154. <学会報告等> 落合雪野「ラオス北部のアカ人女性によるジュズダマ属植物の利用―植物素材への価値づけをめぐって」第19回日本熱帯生態学会年次大会(2009年6月20日大阪市立大学、大阪市) Ochiai, Y. Edible Job’s tears in the Food Culture of Southeast Asia, Korea and Japan(Breeding, Cultivation, Processing and Health Functionality of Adlay and Buckwheat 2009年6 月29日中興大学、台中市、台湾) 松田正彦「ミャンマー・シャン高原南部の畑作農村における農業生態システムの変容―商業的農業への転換と灌漑畑作の発展」(第107回日本熱帯農業学会2010年3月28日千葉大学、松戸市) 松田正彦「ミャンマー水田稲作の集約化レベル―農家聞き取り調査からみた化学肥料投入と収量の実態」(第107回日本熱帯農業学会2010年3月28日千葉大学、松戸市) |
研究成果公表計画 今後の展開等: |
下の論文の他に、学術論文や学会報告として各メンバーが研究成果を公表する予定である。 Yokoyama, S. (2010) The Trading of Agro-forest Products and Commodities in the Northern Mountainous Region of Laos. Southeast Asian Studies [in press]. |