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新自由主義期ラテンアメリカにおける政策的位相の比較研究(h24)

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新自由主義期ラテンアメリカにおける政策的位相の比較研究(h24)

個別共同研究ユニット
代表: 村上勇介(京都大学地域研究統合情報センター・准教授)
共同研究員: 新木秀和(神奈川大学外国語学部・准教授)、出岡直也(慶應義塾大学法学部・教授)、内田みどり(和歌山大学教育学部・准教授)、浦部浩之(獨協大学国際教養学部・教授)、遅野井茂雄(筑波大学大学院人文社会科学研究科・教授)、狐崎知巳(専修大学経済学部・教授)、坂口安紀(日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター・研究員)、住田育法(京都外国語大学外国語学部・教授)、高橋百合子(神戸大学大学院国際協力研究科・准教授)、田中高(中部大学国際関係学部・教授)、二村久則(名古屋大学大学院国際開発研究科・教授)、山岡加奈子(日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター・研究員)
期間: 平成24年4月~平成25年3月(1年間)
目的:  近年のラテンアメリカの政治経済をめぐる主要な見方は次のとおりである。1980年前後からそれまでの国家主導の経済発展モデルの転換と市場経済原理を貫徹する新自由主義(ネオリベラリズム)の導入が始まり、1990年代にラテンアメリカ地域のほぼ全域に行きわたった。しかし、貧困や格差といった構造的な問題は改善されず悪化する場合も見られたことから、新自由主義路線の転換が2000年前後から始まり、左派政権が誕生する国が増加した。
 しかし、社会支出という観点からすると、1990年代と2000年代には大きな変化は観察されず、むしろ継続性が存在する。具体的には、いずれの年代でも、国家予算に占める社会支出の割合(国内総生産に占める割合)を見ると、規模が大きいグループにアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、中規模のグループにボリビア、チリ、コロンビア、ベネズエラ、小規模のグループにメキシコ、ペルー、エクアドルが分類される。このうち、ボリビア、ベネズエラ、エクアドルでは、急進左派と呼ばれる、新自由主義からの離脱と国家の役割の拡大を鮮明に打ち出している政権が2000年前後に誕生し今日に至っている。にもかかわらず、社会支出の規模には大きな変化が見られない。
 本研究は、社会支出の規模を例に、新自由主義期のラテンアメリカにおいて実行された政策の差異を、先行研究とは別の観点から分析し、それが政治変動に与えた影響を検証することを目的とする。
研究実施状況:  研究会を3回実施した。
●第1回研究会
日時:2012年5月22日(火) 17:00~19:30
場所:京都大学地域研究統合情報センターセミナー室(稲盛財団記念館2階213号)
発表:”Guerra, desplazamiento forzado, y conflictos sobre tierra en Colombia” (「コロンビ14:30アにおける武力紛争、強制移住、土地紛争」)Sergio Andres Coronado Delgado (Pontificia Universidad Javeriana; セルヒオ・コロナド、ハベリアナ大学)
●第2回研究会
日時:2012年12月15日(土) 13:30~17:30
場所:筑波大学東京キャンパス文京校舎5階557ゼミ室
報告:「ボリビア現地報告─リフレクシブな政策過程─」岡田勇(筑波大学)
「2012年ベネズエラ大統領選挙と今後の展望」 坂口安紀(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
●第3回研究会
日時:2013年1月7日(月) 15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
報告:Los procesos electorales en America Latina (2009-2012)”(「選挙動向からみる現代のラテンアメリカ」) Manuel Alcanta Saez (Universidad de Salamanca; マヌエル・アルカンタ、サラマンカ大学)
研究成果の概要:  1990年代から2000年代にかけての国民一人あたりの社会支出をめぐる継続性について、規模が大きい国としてアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、中規模の国にはチリ、メキシコ、コロンビア、ベネズエラ、小規模のグループにはペルー、ボリビア、エクアドルが分類される。このうち、ボリビア、ベネズエラ、エクアドルでは、急進左派政権が誕生している。にもかかわらず、社会支出の規模には大きな変化が見られない。
 この点についての今年度の研究活動では、1980年代までのデータを十分に集めることができなかったため、決定的な結論に達するに至らなかったが、暫定的には、1980年代までの歴史的な展開経路の違いに規定されている可能性が高いことが示された。1980年代までの約半世紀のあいだ、ラテンアメリカ諸国は、「国民国家」形成を目標に、輸入代替工業化をおもな柱とする国家主導型の発展をモデルとした。このモデルは、軍事政権、文民政権を問わず共通して追求された。その過程では、比較的早い時期に工業化政策に着手したアルゼンチン、ブラジル、チリ、ウルグアイ、メキシコの5ヶ国と、それ以外の、比較的遅く工業化政策にとりかかった諸国の違いが生まれた。後者の後発工業化国のなかでは、ベネズエラとコロンビアが国内政治の安定化に成功し、先発工業化国と同程度の発展水準を達成した。約半世紀におよぶ上述の展開のなかで、社会支出のパターンが形成されてきたのである。
 社会支出のパターンは、昨年度までの研究で明らかにした、ネオリベラリズム改革の帰結に影響を与えなかったか否かについては、影響はなかったと考えられる。それは、それぞれの国で、社会支出を含めた社会経済構造全体に対する改革としてネオリベラリズムが進められ、その改革を推進すること自体をめぐって対立軸が形成されたためである。
公表実績: ●日本ラテンアメリカ学会第33回定期大会
パネルC「ポスト新自由主義期ラテンアメリカにおける民主主義の課題─中央アンデスの事例から─」
日時:2012年6月2日(土)14:30~16:15
場所:中部大学春日キャンパス10号館(1024教室)
●Conferencia/シンポジウム
“Relaciones Estado-sociedad en America Latina de la era posneoliberal: Ecuador y Peru”(「ポストネオリベラル期ラテンアメリカにおける国家社会関係─エクアドルとペルーの現在─」)
日時:2013年2月2日(土)13時30分~16時40分
場所:京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
●Conferencia/シンポジウム
“Relaciones Estado-sociedad en America Latina de la era posneoliberal: Bolivia y Honduras”(「ポストネオリベラル期ラテンアメリカにおける国家社会関係─ボリビアとホンジュラスの現在─」)
日時:2013年3月9日(土)13時30分~16時40分
場所: 京都大学稲盛財団記念館3階中会議室
●Yusuke Murakami (ed.), America Latina de la era posneoliberal: conflictos, desigualdad y democracia.(『ポスト新自由主義期のラテンアメリカ─紛争、格差と民主主義』)Lima: Instituto de Estudios Peruanos, 2013, 280p.
研究成果公表計画今後の展開等:  新たな研究会の活動において、本研究の成果を検証し深化させ、生かすようにする。